感動の随想 神戸新聞

2月1日、

久しぶりと言ったら失礼だが、本日の神戸新聞の随想に感動した。
自分で忘れないようにここに全文を書き留めておく。

テレビの仕事でインドに行った。貧しい地域で暮らす、
10歳の少女と何日かを過ごした。
少女は、病の母親の代わりに親戚が受け入れ、古い長屋で
何組かの親戚の家族と暮らしていた。

井戸の冷たい水で体を洗い、洗濯も家事も何もかも手伝っていた。
窓のない部屋、むせ返る暑さの中で暮していた。
胸が痛んだ。切なさが体中を痺れさせた。
何日か彼女と共に過ごし、内気な彼女は少しずつ私に心を開いていってくれた。
『将来は先生になりたい』って笑った。
何もかもが揃い、ボタン一つで便利な環境が手に入る日本が頭に浮かび、
その時はこう思った。
『ああ、日本で生まれてよかった。インドの人のために
私ができることはないか、、、』

インドの日差しは、冷房で慣らされている私の体を急激に痛めつけた。
ロケ2日目、あまりの暑さにダウンした。
木陰に座り、体を休ませていた。
30歳くらいの男の人が『大丈夫か』と声をかけてくれ、
40歳くらいの女の人が水を渡してくれた。
さらに座っていると、10歳くらいの女の子が
『おなかがすいてる?』って自分が食べていたポテトをくれた。
女の子の靴は真っ黒に汚れ、穴があいていた。

たった5分くらいの出来事だった。
涙が出た。私は自分の驕りで勝手に比べ、
自分の価値観で勝手に判断していた。
日本人は幸せで、この子たちは不幸だって。
私は決めつけていたんだ。
物質的に豊かな日本は凄いって、、、。
だから足りないものが多いこの国の人たちは
かわいそうなんて上から目線で、、、。
だけど、道ばたで座り込む人に駆け寄る日本人は
どれだけいるのだろう。
自分の大切な食べ物を渡す優しさはあるのだろうか。
私はこの地でみたもの、出会ったもの全てを
一生忘れないだろう。
シンガーソングライター 川嶋あい